マスターのおすすめレゲエ名盤 Vol.17
Linton Kwesi Johnson『Bass Culture』~言葉が音楽になる瞬間~
こんばんは。BAR UNITYのマスターです。今回のVol.17は、これまでとは少し毛色の違う一枚を紹介します。リントン・クウェシ・ジョンソンの1980年作『Bass Culture』です。
ジャマイカ生まれ、イギリス育ちの詩人・活動家であるLKJが、デニス・ボーヴェルのダブサウンドをバックに自作の詩を語る、「ダブ・ポエトリー」というジャンルの代表作です。『Bass Culture』は1980年にIsland RecordsからリリースされたLKJの3作目です。当時のイギリスにおける移民への差別や、警察の暴力といった社会問題を、鋭くも詩的な言葉で切り取っている一枚です。
厳密にはルーツレゲエではないですが、レゲエの音楽性を語る上では欠かせない、異色にして重要な一枚だと思って選びました。
リントン・クウェシ・ジョンソンは1952年、ジャマイカ生まれ。11歳でイギリスに移住し、ロンドンのブリクストン地区で育ちました。当時のイギリスは、カリブ系移民への差別が根強く残る時代。そんな中で詩と政治活動に目覚めたLKJは、パンクロックの持つDIY精神やアジテーションの力を、レゲエの重厚なリズムと組み合わせるという、独自のスタイルを築き上げていきました。
今日のおすすめは「Bass Culture」|Linton Kwesi Johnsonの聴きどころ
タイトル曲「Bass Culture」は、低音の力強さを詩の力と重ね合わせたような一曲。歌ではなく語りなんですが、リズムに乗る言葉の流れが、まさに音楽になっている瞬間を感じられます。
もう一曲挙げるなら「Inglan is a Bitch」。イギリスに渡ったカリブ系移民たちが、低賃金の過酷な労働を強いられていた現実を、皮肉と怒りを込めて語る一曲です。ユーモアを交えながらも、社会への鋭い視線が際立つ、LKJらしい表現がよく表れています。
詩の朗読とダブが重なる
LKJがジャマイカのパトワで自作の詩を語り、デニス・ボーヴェルが手がけるダブ・レゲエがその言葉を支えます。歌とは違う言葉の響きや、低音とリズムの重なりにも耳を傾けてみてください。
いつもの歌ものレゲエとは少し違う聴き方ができる一枚。今回は、そんな作品を選びました。
共同プロデュースを手掛けたデニス・ボーヴェルは、イギリスのレゲエバンド、マトゥンビの中心メンバー。彼のダブサウンドが、LKJの語りに独特の重厚感と広がりを与えています。2002年には、LKJが存命の詩人としては史上2人目という快挙で、名門「ペンギン・モダン・クラシックス」シリーズに選ばれるなど、単なる音楽アーティストの枠を超えた評価を受けています。
BAR UNITYで音楽を楽しみませんか?
今夜も異色の一枚をカウンターで。普段と違う音楽の楽しみ方を提案できたら嬉しいです。歌わずにリズムに乗せて言葉を語るというスタイルは、当時としてはかなり実験的な試みでした。それでも聴くたびに新しい発見があるのは、LKJの言葉選びの巧みさと、ボーヴェルの作るリズムの説得力があってこそだと思います。
「クウェシ」というミドルネームは、ガーナの習慣にならって「日曜日生まれ」を意味する名前だそうです。LKJはロンドンでブラック・パンサー党の運動に参加しながら詩作を始め、1973年に本格的に注目を集めるようになりました。この『Bass Culture』は、1978年の『Dread Beat An’ Blood』、1979年の『Forces Of Victory』に続く3作目。前2作の評判の高さがあったからこそ、Island Recordsでのさらなる飛躍が実現したんだと思います。
ちょうどこの時期、イギリスではパンクロックのムーブメントも盛り上がっていて、サッチャー政権への反発という共通の感情から、パンクとレゲエは自然と手を取り合うようになっていました。LKJの言葉が持つ怒りと詩情は、そうした時代の空気を最も鋭く映し出したもののひとつだったと思います。
収録曲「Street 66」は、ロンドン南部ブリクストンでの生活をリアルに描いた一曲で、当時の移民コミュニティの日常を切り取っています。LKJは音楽誌NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)やメロディ・メイカー誌のライターとしても活動していて、Virgin Recordsのために、レゲエアーティストたちの評伝も手掛けていました。言葉を武器にする人であると同時に、レゲエという文化そのものの記録者でもあったんだと思います。
デニス・ボーヴェルはこのアルバムでも自身のバンド、マトゥンビのメンバーであるロイド”ジャー・バニー”ドナルドソンやウェブスター・ジョンソンらとともに演奏を手掛けていて、バンド全体としての一体感のあるサウンドが、LKJの言葉をより一層引き立てています。今聴いても色褪せない緊張感と説得力を持った、まさに「スピーチとリズムが融合した音楽」だと思います。
細部までこだわって作られた一枚で、何十年経っても、レコードに針を落とすたびに新しい発見がある。そんな懐の深さを持ったアルバムだと思います。
この曲、BAR UNITYで流しています
『Bass Culture』は、BAR UNITYの店内でも流れることがある一枚です。言葉と音楽の境界を溶かすような世界観を、ぜひ栄町のカウンターで体感しに来てください。
Good music. Good drinks. Good vibes.
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▶️ YouTubeで聴く:Linton Kwesi Johnson – Bass Culture
🎧 Spotifyで聴く:Bass Culture – Linton Kwesi Johnson

